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積分に関する不等式

[定理](wirtinger's inequality) 

区間[0,1]で定義される微分可能な関数f(x)は,f(0)=f(1)=0を満たし,f'(x)は連続であるとする.このとき,以下の不等式が成立する.

∫[0,1] f'(x)^2 - (πf(x))^2 dx ≧ 0

 

[考え方]

g(x)=f(x)/(sinπx) を考えてみる. (x=0,1は置いておいて)

すると ,f(x)およびsinπxは(0,1)で微分可能なのだからg(x)も微分可能で,

f'(x)=g'(x)sinπx + πg(x)cosπx となり,代入して

f'(x)^2-(πf(x))^2 =

g'(x)^2 * (sinπx)^2 + π^2 * g(x)^2 * cos2πx + π * g(x) * g'(x) * sin2πx …①

ここで,第一項は非負であることと,

∫ π^2 * g(x)^2 * cos2πx dx = π/2 * g(x)^2 *sin2πx - ∫ π * g(x) * g'(x) * sin2πx dx …②

であることから (①の第3項 と ②の 第2項が打ち消し合う)

∫ f'(x)^2-(πf(x))^2 dx ≧  π/2 * g(x)^2 *sin2πx を得る.

 

あとは定積分すればよいのだが,g(x),g'(x)のx=0,1の挙動がわからないため,安易に定積分できない.

ここで,

lim[x→0]g(x)=lim[x→0]{f(x)-f(0)}/(x-0) * (πx/sinπx) * (1/π) = f'(0) * (1/π) 

lim[x→1]g(x)=lim[x→1]f(x)/sinπx=lim[x→0]{f(1-x)-f(1)}/-x * πx / sinπx  *(-1/π) =f'(1) * (-1/π)

であるので,g(x)はg(0),g(1)を以上の値と定めれば,[0,1]で連続.

 

しかし,g'(0),g'(1)で連続であるか(g'(0),g'(1)が有限確定値か)がわからないため,結局定積分はできないので,

lim[t→0]∫[t,1-t]g'(x)^2 * (sinπx)^2 + π^2 * g(x)^2 * cos2πx + π * g(x) * g'(x) * sin2πx dx

を考えると,

∫[t,1-t]g'(x)^2 * (sinπx)^2 + π^2 * g(x)^2 * cos2πx + π * g(x) * g'(x) * sin2πx dx

=π/2 *{ g(1-t)^2 *sin2π(1-t) - g(t)^2 * sin2πt } +∫[t,1-t] (g'(x)^2*(sinπx)^2) dx …③

となる.

t→0として,この第2項が有限確定値αに収束すれば,

lim[t→0]∫[t,1-t]g'(x)^2 * (sinπx)^2 + π^2 * g(x)^2 * cos2πx + π * g(x) * g'(x) * sin2πx dx

=α となるが,

lim[t→0]∫[t,1-t] f'(x)^2 - (πf(x))^2 dx

=lim[t→0]∫[t,1-t]g'(x)^2 * (sinπx)^2 + π^2 * g(x)^2 * cos2πx + π * g(x) * g'(x) * sin2πx dx

であり,

「関数f(x),g(x)があって関数f(x)がx→0で0に収束し,h(x)=f(x)+g(x) としてh(x)がx→0でαに収束するとき,g(x)はαに収束する.」

という補題により,

(注:この補題は不要,移項してしまえば差の極限はおのおのが収束するなら極限の差に一致するという定理を適用すればいいだけなので.)

lim[t→0]∫[t,1-t] f'(x)^2 - (πf(x))^2 dx はf'(x),f(x)の連続性から,∫[0,1]f'(x)^2 - (πf(x))^2 dx に収束し,かつ有限確定値.

lim[t→0]∫[t,1-t]g'(x)^2 * (sinπx)^2 + π^2 * g(x)^2 * cos2πx + π * g(x) * g'(x) * sin2πx dx

については③から第一項は0に収束する為,

上の結果と合わせてlim[t→0]∫[t,1-t] (g'(x)^2*(sinπx)^2) dxも収束することが言える.

∫[0,1] f'(x)^2 - (πf(x))^2 dx = lim[t→0]∫[t,1-t] (g'(x)^2*(sinπx)^2) dx となる.

 

さて,

g’(x)sinπx = f'(x) - πg(x)cosπx であったのだから, 

x→0 のとき (左辺) = f'(0) - πg(0) = f'(0) - f'(0) = 0

x→1 のとき (左辺) = f'(1) + πg(1) = f'(1) - f'(1) = 0

なので,(g'(x)sinπx)^2はx→0,1で0に収束することがわかる.

よって,g'(x)^2*(sinπx)^2は[0,1]で連続であることが保証されたので,

∫[0,1] f'(x)^2 - (πf(x))^2 dx = ∫[0,1] (g'(x)sinπx)^2 dx  ≧ 0 が結論付けられる.

 

注)補題の証明

任意の正の数εに対し,ある正の数δをとれば必ず|x|<δの範囲で|g(x)-α|<ε となることを示せばよいが,

仮定より,任意の正の数εに対し,

|x|<δ_1 ⇒ |f(x)+g(x)-α|<ε/2

|x|<δ_2 ⇒ |f(x)|<ε/2

なので,δ=max{δ_1,δ_2} として|x|<δの範囲で

|g(x)-α|=|f(x)+g(x)-α-f(x)|<|f(x)+g(x)-α|+|f(x)|<ε となるので,g(x)はαに収束する.