京都大学 理学研究科数学系 院試について
インターネット上には院試についての情報がほとんどないのでまとめておく.(1次合格発表時点で書いているので,情報が加われば更新します.)
1.出題について
H29年からは基礎科目と専門科目と英語のみになった.
H29年のみ基礎科目の出題が
からの出題であったが,結局H30年は従来通りの
微積分,線形代数,一様収束がらみ,複素解析,代数学(群論まで),幾何学(多様体まで)の6題
となった.今後もこの傾向は続くと考えるのが妥当だろう.
専門はほぼ分野は固定されており,英語も英訳,和訳の2題の形式.去年のみ和訳が英語で答案を書けというものであったが,結局今年は例年通り英語で定義を書けというものに戻った.
2.受験者について
H30年は全体で88人であった.(欠席者含め)
うち数理解析研究所のみを受験している人は6人くらい?
なので,数学系のみを考えれば欠席者を考えると80人弱が受験していることになると思われる.
3.合格人数について
一次合格者は,数学系は66人だった.なので10人くらいが筆記試験で落ちるということらしい.
4.合格に必要な点数について
謎.1次自体に通るには恐らく基礎科目で半分も必要ないと思われる.
(先端コースのみを志望するとかでない限り)
基盤であれば1次試験合格=合格,であり先端であればだいたい6割程度(うち専門1つはできれば完答したい)という説があるが,真偽不明.
5.面接について
先端・基盤によらず筆記の出来がそれなりに良ければ事務的な質問で終わるようである.(もちろんそれぞれ必要なボーダーは違うであろうが)
そうでなければ,院試で解けなかった問題について解いてみて,と言われるらしい.自分の場合は和やかな雰囲気で事務的な話をして終わった.
6.対策について
基礎科目
単に基盤コースに合格したいだけならば,
1:重積分の計算(の基礎的なもの)
2:線形代数の基本的な計算,具体的には
・対角化 ・連立方程式が解を持つ条件 ・逆行列の求め方 ・ジョルダン標準形への変形
3:留数定理を用いた積分の計算(の難しくないもの)
ができれば合格できると思われる.
自分がこれらの分野の対策(対策のために持っていたわけではないが)で使用した本は,
弱点克服大学生の微積分 http://amzn.to/2wkJXF6
弱点克服大学生の線形代数 http://amzn.to/2x9mepd
マセマの複素解析 http://amzn.to/2wkMT4H
がよくまとまっていてオススメである.
いわゆる絶対に落としてはいけないレベルの問題は上3冊で十分対応できる.
これらに加えて,総合的な確認として使用する本としては
詳解と演習大学院入試問題(数学) http://amzn.to/2g2iEcn
がオススメ.微積分,線形代数,複素解析,微分方程式の入試問題についてまとまっており,大学院入試対策本にしては珍しくそこそこレベルも高いことも掲載されている(一様収束の話や,微分方程式の解の存在や一意性についてまで)ので,割と数学科受験者にもオススメできる本である.
実際のところ,これらが完璧にできていれば基盤コースなら合格はできるだろう.多分.
以下は本格的に院試対策をするならオススメできる本について分野ごとにあげておく.
1:実解析
過去問を見ると,まず第一に一様収束,連続性の問題が頻出である.
これらについてしっかり演習を積むならば,
完全攻略イプシロンデルタ論法 http://amzn.to/2x9MoYE
が大変よくこれらの分野についてまとまっていてオススメ.
一様収束,一様連続がらみの問題がここまで多く掲載されているのはこの本くらいであろう.そもそもイプシロンデルタ論法が苦手な人にもオススメできる.
この本の演習問題を(難問マーク付も含め)全てやれば,過去問のこれ系統の問題はだいたい解けるかと.ちなみに京大は,閉区間で連続ならば一様連続である,という事実を使う問題が多い.
次に多いのが,広義積分の収束性の問題である.これについてよくまとまっているのは,
明快演習微分積分 http://amzn.to/2g3yALj
くらいであろう.といってもそこまで多く掲載されているわけではないが...。
この本は実は結構レベルの高い問題も多く掲載されている(極限と積分の交換など)ので,そういった分野の演習ができるのも良い点ではある.
実解析についてはこれくらいで,後は過去問演習をするほかないだろう.
結構京大の解析の問題は難しいので,過去問はしっかり解けるようになっておくべきであろう.
また,辞書的に参照すると便利な本としては
が挙げられる.全部やるのは正気の沙汰ではないが,大変勉強になる問題は多く,演習不足に感じられる分野に絞るなどして局所的に使用するには大変オススメできる本である.
2:線形代数
基本的には最小多項式の理論さえわかっていれば過去問もだいたい簡単なので,(計量が入った問題などはあまり出ていない)それがわかっていればなんとかなるとは思うが,先ほど挙げた本よりも難し目の演習書としては
演習 線形代数 http://amzn.to/2wvFznh
がオススメ.(ライブラリ系ではこれが一番レベルが高い)
辞書的に使用するものとしては
が良いだろう.一般固有空間についての問題があるのはこの本くらいである.
3:複素解析
近年は留数定理を用いた積分計算の簡単なものばっかりだったので,そんなに真剣に対策しなくてもいいのかもしれないが,昔は偏角の原理などを使わないと解けないような問題も出ていた.
それらの問題も演習したい,となると市販されているものでは
関数論演習 http://amzn.to/2w0KqKc
しかないだろう.この本はライブラリシリーズにしては相当難しいところまで扱っていて,複素関数論の留数定理がらみでない問題を多く演習できる大変良い本である.(結構難しい問題が多い)
また当然留数定理を用いた積分の難問(分岐を考えないといけないものなど)も含まれているので,しっかり複素解析を得点源にしたいなら持っておきたい本である.
また,解析系全般の入試問題を集めた本として
大学院への解析学演習 http://amzn.to/2vbAbl2
が挙げられる.解説が独特で読みづらいが,院試で専門科目に相当する分野を解説しているのはこの本しかないのと,複素解析についての問題も解説されているので,余裕があれば読んでみてもいいかもしれない.
4:集合・位相
過去問を見ても2年しか出ていない分野なので実際のところもう出ないかもしれないが(去年は出たけれど),自分は
集合位相演習 http://amzn.to/2g4essJ
を使用した.コンパクト性までしっかり扱っている上,問題数も豊富で集合位相の分野を理解するには大変いい問題集である.
また追加演習として
解いてみよう位相空間 http://amzn.to/2w0zHzd
も利用した.解説はこちらの方が詳しいのと,こちらの方が少しだけ連結がらみの問題が豊富なので,こちらを使用してもいいかもしれない.
5:代数学
演習書としては
演習 群・環・体 http://amzn.to/2vbRqm1
が最も分かりやすくてオススメ.とはいえ正直この分野は教科書をしっかり理解する方が大切であろう.(雪江先生の本など)
絶版で高騰しているが,専門分野まで見据えるならば
大学院への代数学演習 http://amzn.to/2iorJNt
がガロア理論の問題なども扱っており参考になる本である.
6:幾何学
捨ててたので不明.
また,内部生に限った話であるが,学内PCから見れる,数学教室のHPに上がっている数学基礎試験の過去問が大変基礎試験の勉強に役に立つのでぜひ利用するべきである.(実際今年の留数計算の問題はそこに上がっている問題とほぼ同じであった)
専門科目
当たり前だが自分が今読んでいる本の演習問題を解くくらいしかないだろう.
この分野に相当する演習書は上記に挙げた大学院への〜シリーズくらいしか存在しない.
というものがあり,大変参考になる素晴らしいサイトである.
英語
英訳が問題になるが,自分はwikipediaの英語版などを見て勉強した.また,
を参考にした.正直2時間くらい対策すればできるようになってしまうお手軽分野である.